心臓は、生体の血液循環を担う高性能ポンプである。正常であれば、一生の間に約30億回拍動する。そのポンプ機能は心筋の収縮によって生じ、収縮を起こす刺激は、一定間隔で発生する電気信号である。心臓の中には4つの内腔があり、左心房と左心室は血液を全身に送り、右心房と右心室は戻ってきた血液を肺へ送る。心房と心室、心室と血管の間には弁があり、それらの開閉により血流方向を制御している。心臓疾患は、心臓を栄養する冠動脈や全身の血管の疾患、心臓を構成する弁や心筋の疾患、心臓の拍動機能の疾患など数多い。福井大学循環器内科では、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈、心不全、心臓弁膜症、心筋・心膜疾患、大動脈・末梢動静脈疾患など、心疾患の診療を中心に、成人循環器疾患全般を診療対象とする。
井階友貴教授が生まれ育ったのは、兵庫県丹波篠山市。四方を山々に囲まれた小さな町だ。子どものころ、風邪やインフルエンザにかかると、おじいちゃん先生が診てくれる診療所へ行く。待合室に居るのも、ほとんどがおじいちゃんとおばあちゃん。和気藹々、楽しげに話をしている。身体が悪くて来ているのに、なぜ、ニコニコしているのだろう」子どもの眼には不思議で奇妙、しかし温かい光景に映った。「それが、たぶん、地域医療に心を引かれた最初だったのではないかな」大学卒業前、地域医療への関心はあったものの、当時はまだ、「全人的に人間を捉え、特定の臓器・疾患に限定せず、多角的に診療を行う総合診療科」は、概念も名前もなかった。
世界保健機関(WHO)は、障害調整生存年(理想的な寿命と比べ、障害や早死で失われた年数。疾患負荷の大きさを示す)で評価すると、2030年に精神疾患が第1位になるという予測を発表した。同じくWHOは、新型コロナウイルス感染症が発生した最初の1年間に、不安症とうつ病の有病率が世界で25%という驚異的な増加を示したと報告している。福井県でも、認知症患者の増加、ならびにストレス社会を反映したうつ病や適応障害が増えている。昨今、精神科外来の敷居が低くなったこともあり、患者数は増す一方だ。
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