本年の初め、福井大学医学部附属病院産科婦人科はダブルの喜びに沸く。 一つは、吉田好雄教授らの「ショック状態の深刻な患者における癒着胎盤スペクトラム帝王切開術に対する子宮保持法の評価」が英国の著名なオンライン科学誌BMCに掲載されたことである。癒着胎盤とは、胎盤が子宮筋層に付着して剥がれない病態。帝王切開など子宮内膜が傷つくような手術をした人に発症しやすく、胎盤が内子宮口を塞ぐ前置胎盤を合併する例が多い。出血多量、血液凝固異常を起こし、妊産婦死亡の一因となっている。対処は子宮全摘出だが、膀胱、尿路、腸管など周辺臓器を損傷するリスクが大きく、難度の高い手術となる。
「SCU」とは、脳卒中集中治療室のことで、Stroke Care Unitの略。よく聞くICU(IntensiveCare Unit)の対象となる患者の中でも、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血など、脳血管障害の急性期患者に特化した集中治療室である。福井赤十字病院では、神経内科と脳神経外科で構成される「脳神経センター」に、このSCUが設置されている。超急性期にいかに早く治療するかが鍵となる脳卒中の患者に対して、医師と看護師が24時間対応し、緊急治療と看護ケアを切れ目なく行っている。脳卒中に特化した、このような治療や看護を受けることができ、12床あるSCUは北陸では最大規模だという。そのうち2床は陰圧の個室となっていて、感染症の患者にも対応できる。
済生会は1911年、「恵まれない人々のために施薬救済による済生の道を広めるように」という明治天皇の済生勅語によって創立された恩賜財団である。現在、全国に82の病院を擁する、非営利では世界最大の社会福祉法人。福井県済生会病院は1941年に創設。23の診療科と460床を有する地域の中核病院であり、笠原善郎院長が2023年4月1日、その役職に就いた。同院の使命は2つある。一つは、生活困窮者や社会的弱者を支援することであり、医療費の減額・免除、刑余者への就労や医療支援、性暴力被害者への支援などに尽力している。もう一つは、優しい医療を提供して地域に貢献すること。優しい医療とは、最新の高度な機器や薬剤を用いることではなく、Physical(身体)、Mental(心)、Social(生活)という3つの観点から、「患者さんの立場で考える」医療のこと、と笠原院長は説く。
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