マネジメントメッセージ

スギ薬局グループの強みである人的資本とDXで、「トータルヘルスケア戦略」を推進し、皆様の健康で豊かな生活への貢献を目指します。

代表取締役社長 杉浦 克典

スギホールディングス株式会社

代表取締役社長杉浦 克典

事業環境を取り巻く外部環境とスギ薬局グループの対応方針について

経済がグローバル化し、供給網としてのサプライチェーンが高度化する中で、コロナ禍やウクライナ危機はグループにも大きな影響を与えています。足元では、原油や小麦などが高騰する中、急速な円安も加わり、物価を押し上げ、電気代は高騰しています。オミクロン株による第7波、第8波もピークを越え、いよいよ5類へと移行し、日常が戻ってきますが、個人消費の回復が遅れ、厳しい状況が予想されます。

消費が低迷している一方で、価値を体感・体験できる商品やサービスには惜しむことなく投資するこだわり志向の「プレミアム消費」が増加しています。また、コロナ禍によって進歩した非接触・非対面の活動も新たなライフスタイルとして定着しています。興味深いのはシニア層のスマートフォンの普及拡大で、若い世代と同様にシニア世代もネットやアプリから情報を取得し、消費の入り口として急伸しており、ヘルスケア市場も変革を余儀なくされています。

その中で当社グループのビジネスは、少子高齢化が進む日本国内で数少ない成長産業だと認識しています。高齢化の進展とともに、自身の健康や美に関心が高い人が増えており、ヘルスケア産業はさらに広がっていくと考えています。ドラッグストア業界全体では、約10%程度の伸びがあるものの、調剤領域においては、薬価・診療報酬改定によって利益率が低下しています。対人業務強化の流れの中で厳しさは増しており、今後は本格的に業界の再編、淘汰が進んでいくと予想しています。その中で、当社グループは、様々な可能性を視野に入れて志を同じくする方々と積極的に連携していきたいと考えています。

スギ薬局グループの特徴や強みを活かした価値創造について

代表取締役社長 杉浦 克典

当社グループには人的資本として、薬剤師、管理栄養士、ビューティアドバイザー、看護師、登録販売者など、多様な専門家人財が揃っています。中でも薬剤師は約3,700名が在籍しています。薬剤師不足が続き、薬剤師の確保が喫緊の課題である中、従来の調剤薬局やドラッグストアのみならず、スーパー、コンビニ、EC事業者などの調剤事業参入も、薬剤師獲得を一層困難なものにしています。

そのような中でも着実に薬剤師を増員できていることが、当社グループの大きな強みです。ドラッグストア黎明期から一貫して調剤併設型ドラッグストアチェーンの展開に挑戦し、成長してきた当社グループだからこそという自負もあります。創業から変わらぬ処方せん調剤への取り組みは、地域に、そして患者様一人ひとりと向き合いたいと志す薬学生や現役薬剤師の具体的なビジョンとなり、共感となっていることが、採用を有利に展開できる根幹です。

年間100店舗を超える出店スピードも強みです。ドミナント出店戦略で、関東・中部・関西の大都市圏の規模拡大と、北陸エリアへの出店も強化し、昨年は長野県にも初出店を果たしました。2022年度は107店舗の新規出店を達成し、業界トップクラスの年間出店数を継続しており、当社グループ全体で2023年2月末現在の店舗数は1,565店に達しました。当社グループの強みである調剤併設率も大手ドラッグストアの中でトップクラスの84.4%まで拡大し、トータルヘルスケア戦略を実行する上で、価値創造の源泉となっています。健康維持からお亡くなりになるまでのすべての健康ステージで、信頼されるかかりつけ薬局として存在するべく、新規開局を進め、既存店の調剤室および調剤待合室の拡大拡張にも積極果敢に取り組んでいます。薬剤師をはじめ店舗の専門家人財の活躍によって、医療機関を中心とした持続的な地域包括ケアの実現に貢献していきたいと考えています。

デジタルへの取り組みも強化しています。お客様に、より快適で健康的な生活を送っていただくための当社グループアプリによるサービスの提供が、お客様満足度を向上させ、店舗や各種サービスをご利用いただくという好循環につながっています。2023年1月にはダウンロード数1000万を超えるデジタル戦略をけん引する「スギ薬局アプリ」の刷新を行いました。細分化されたセグメントで個別の情報提供やクーポン配信など、顧客体験や顧客満足度を高めます。商品やサービスの提案力を向上させ、一人ひとりの満足にお応えすることでお客様とのつながりを深めます。店内では、自分のスマホがレジ替わりになり、店外では店舗の品揃え・価格・在庫がわかり、ECサイトから注文が可能になるなど、お客様にとって「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」を感じていただける環境の実現を目指します。疾患啓発プラットフォーム「スギサポWalk」をはじめとする各健康支援アプリも顕著にダウンロード数を拡大しており、顧客生涯価値を向上させるツールとして存在価値を高めています。
また、オンラインでのカウンセリングサービスはもとより、店舗でもビューティ領域や生活習慣改善の提案にデジタルデバイスを活用し、お客様の満足度を高めています。店舗スタッフ一人ひとりが活き活きと活躍できる環境が整備されることで、働き方が改善され、対人業務に注力でき、お客様満足度につながります。お客様をはじめ、すべてのステークホルダーへの価値の創出にDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進していきます。これら価値創造の源泉である当社グループの強みを一層磨き上げ、地域医療を支え、地域社会へ貢献すべく、当社グループが設定した5つのテーマと16の重要課題への対応を進め、サステナビリティ経営を推進し、持続可能な社会の実現に寄与してまいります。

スギ薬局グループのトータルヘルスケア戦略について

「トータルヘルスケア戦略」、それは、日本社会が抱える少子高齢化への対応、次々と創出され進化するデジタル技術を活用し、健康・医療というキーワードでお客様・患者様がどの健康状態であっても支援させていただく、当社グループの取り組みの全体像を表す、基幹となる戦略です。人は一生のうちに、病気やケガ、加齢による変化や、健康を維持するために様々な場面で幾度となく医療や薬に関与します。「トータルヘルスケア戦略」は、健康的な生活を継続できるよう予防や未病など「セルフケア」として関わる期間、病気を発症し、急性期や慢性期の治療に向き合う「医療・服薬」期間、そして「介護・生活支援」期間の3つのステージに分け、地域生活者の病気予防・健康管理に生涯に渡って関わり一貫したケアサイクルの中で健康増進の実現を目指すものです。当社グループの調剤併設型ドラッグストアを中心に、健診センターや介護施設、フィットネスジムなど、リアル店舗と、さらに行政機関とも連携し、DXを駆使したヘルスケアネットワークを構築できればと考えています。そうすることで地域密着でリアルとデジタルをシームレスに活用できるプラットフォームによってどのような健康状態のお客様とも接点を持ち、最適な商品・サービスを、一人ひとりの状態に合わせて提供することができます。

スギ薬局グループのトータルヘルスケア戦略について

これまでのように、健康への不安や悩みが生じてから医療機関を受診するという対応だけでは、人生100年時代を迎えた超高齢社会を豊かに過ごすことはできません。それぞれのステージで自治体や健康保険組合、医療・介護従事者などの多職種連携によってお客様一人ひとりの健康的な生活を支え続けていくことが必要です。医療を中心に多業種が連携し、地域、高齢者、その家族を支えていくネットワークの構築が急務です。すでに企業、行政からもご賛同いただき、地域でのヘルスケアネットワークが拡大しています。この戦略は海外でも評価され、アジア各国で現地企業と協業し取り組みが進んでいます。引き続き、様々な企業・団体・行政と共にこれまで以上に取り組みのスピードを速め、「トータルヘルスケア戦略」の実現に邁進していきます。

スギ薬局グループのサステナビリティ経営について

2021年に、サステナビリティ経営を推進するための体制を整備すべく、サステナビリティ委員会、ESG推進室(現: 社長室ESG推進課)を組織として立ち上げ、5つのテーマと16の重要課題(マテリアリティ)を特定し、取り組みを活発化してきました。
SDGsへの意識の高まりは全世代に及んでいますが、特に、ミレニアル世代、Z世代と呼ばれる若い世代にその傾向が顕著です。環境・人権に配慮された商品を選択する「エシカル消費」行動もその一つでしょう。調達先の人権の問題、サプライチェーン全体で考えるべき課題への対応を社会は厳しい目で見ています。2022年度は、国際的な人権課題への意識の高まりと企業の社会的責任を踏まえ、スギ薬局グループ人権方針を策定し、サプライチェーンにおいて当社グループが責任を果たしていく体制整備に着手しました。今後は、人権に配慮した上で調達されている原材料を使用いただくようにお取引先様にお願いをしていかなければいけません。また、NPO団体が提供しているような、世界のお取引先様のエシカルレベルを評価するプラットフォームなどを活用し、特に自社開発商品に関しては、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを強化していきます。

資源循環にも力を入れていきます。『国内の資源は国内で回していく』という考え方のもとで、多くの商品を販売している当社グループの責任として、少しでも貢献できるように多くの方々と連携していきます。2022年度は、ペットボトルをペットボトルに再生する『ボトルtoボトル 水平リサイクル』のチャレンジを開始しました。まだまだテスト展開中ですが、回収拠点として展開を開始した店舗では、明らかな来店頻度の向上、買い上げ点数の向上もあり、お客様にも好評でwin-winな結果も出ています。また、調剤事業を中心に大量に排出されるお薬PTPシートのリサイクルに対して、回収拠点としての役割を果たします。その他、廃棄予定のユニフォームを回収し、店舗設備にアップサイクルする取り組みや、フードバンクと連携することで、食品ロスと貧困問題への対応を進めるなど、一歩一歩社会課題に対峙していきます。
社会課題に立ち向かうことで、地域に貢献し、その延長線上に、地域の皆様に愛される企業としての地位を確立していきます。

脱炭素経営における考えや取り組みの進捗について

当社グループは、 “脱炭素社会の実現”を重要課題に掲げ、取り組みを加速させてきました。初年度は、社有車のガソリン消費を中心に、温室効果ガスを直接排出するスコープ1、電気の使用に比例するスコープ2の見える化を行い、2030年のCO2排出削減目標を設定しました。2030年度の1店舗あたりCO2排出量を2014年度比で35%削減を目標としていましたが、早期に50%減へ上方修正を行いました。2021年12月には、TCFD提言への賛同表明を行った上で、TCFDが提言する開示要請項目に応じて、サステナビリティ委員会や取締役会の場で、リスクや機会の特定、CO2排出削減にむけたロードマップの検討など、適切に対応を進めています。
直近では、具体的な削減策を実行すべく、店舗屋上にオンサイトPPAの運用で太陽光パネルを数十店舗レベルで設置しました。既存店、新店の対策を進める一方で、全店の屋根にパネルを設置しただけでは、CO2削減目標達成が難しいことも判明しています。当社グループは、安易にCO2フリーメニュー等に頼らず、“追加性”(新たな再エネ設備の投資につながる効果)のあるオフサイトPPA、自己託送型の再生可能エネルギー導入にも果敢に挑戦し、社会的な責任を果たしてまいります。

店舗の屋上に設置した太陽光パネル
店舗の屋上に設置した太陽光パネル

一方で、商品の調達から製造、販売、物流、廃棄に至るまで、サプライチェーンすべての活動で排出するCO2排出量であるスコープ3総計は、スコープ1、2の10倍以上となる約170万トンのCO2を排出しています。
しかし、当社グループだけでスコープ3を削減することは困難です。

企業間で連携し、ゼロベースでアイデアを出し合いながら、速やかに実証実験を行い、トライ&エラーを繰り返していく必要があります。過剰な包装を控えたり、植物油インキを使用したりと、CO2排出量の低い商品を付加価値として、お客様に訴求しながら販売する工夫や努力も必要です。販促物やPOPの無駄を省くことはもちろん、販売個数予測の精度を協力して向上し、不必要に仕入れすぎない、返品や廃棄を増やさない、製・配・販の連携も必要になります。また、ペットボトルを回収し、それをまたペットボトルの再生につなげるなど、廃棄を減らす資源循環の取り組みの加速も重要です。お取引先様との会議の場では、スコープ3の削減に向け、当社グループとの取り組みをお願いしています。中長期的な協業や、コンソーシアムなどの枠組みを設立しながらアイデア創出にご協力いただきたいと声をかけさせていただいております。まだまだ、道筋が定まっていませんが、既存の枠を超えた連携で環境課題に対応すべく、様々な分野の方にご指導をいただきたいと考えております。

人財戦略について

急速なデジタル化、少子高齢化、人生100年時代、キャリア価値観の変化など、企業を取り巻く環境は大変革しています。当社グループにおいても社員をコストではなく資本として捉え、人は成長し価値創造の担い手になるとの信念を持ち、積極的に人財へ投資して企業価値を高めていきます。こうした考え方に基づき、人財戦略と経営戦略を連動させ、人事制度改革、適正配置、健康経営、社員エンゲージメントの向上を推進していきます。

当社グループは過去数年で、正社員やパートナー社員の人事制度を刷新し、定年延長や退職金制度を改定、福利厚生を充実させ、社員が活き活きと働ける環境づくりを進めてきました。2023年度は、当社グループの成長を後押しできる人事制度改革を進めます。管理職は役割の重さ・大きさと、能力の発揮度を評価するジョブ型の評価制度へ転換します。また、薬剤師・医療事務の人事制度も改定し、調剤薬剤師のルールや、勤務地区分、専門的能力を持つ薬剤師への評価や給与体系などを抜本的に見直します。デジタル領域をはじめとした専門家人財は、既存社員とは異なる働き方で成果が求められるため、既存の評価制度では評価できません。従来の人事制度から切り離すことも考えています。 これからは「個人」に焦点を当てます。性格適性やスキル、資格等級、評価や目標など、人事データとして「見える化」し、一人ひとりの能力を最大限に発揮できる適正配置を進めます。人事データの可視化と並行して『人財ポートフォリオ』を作成します。各事業・部門にどんな能力を持った人が、どれくらい必要なのかを見える化し、理想と現実のギャップを明確にします。その上で、たとえば、新卒一括採用に限定しない採用方針や、既存社員の再配置、外部人財の獲得、アルムナイネットワークの構築、専門職・技術職の積極採用など、ギャップ解消に向けた施策を進めます。

健康経営優良法人

また、当社グループの最も大切な財産である社員が、笑顔でいつまでも健康的に働ける職場環境を追求し続けます。当社グループはこれまで4年連続で健康経営優良法人の認定を受けています。しかし、応募した多数の企業の中で、当社グループは健康経営をリードしている状況ではありません。健康診断の受診率100%必達は当然であり、、現在の喫煙率12%台を10%未満にすべく、禁煙サポート施策を打ち出します。有休取得、育休取得促進にも力を入れ、女性が活躍しやすい環境も整備し、社員のエンゲージメントを高めていきます。

DXの戦略について

当社グループのDX戦略の根幹は、生産性の向上と顧客生涯価値向上の実現を通じて、お客様と向き合う時間を豊かにしたいという願いです。そして、お客様の相談やカウンセリングなど、デジタル化できない、人と人との交わりこそが当社グループの最大の強みといえます。

デジタル技術でいかに新しい価値を提供できるか、業務のデジタル化だけでなく、組織や業務プロセス、企業文化まで変革できるか、それによって当社グループの競争力を高め、優位性を確立することができるかに注力していきます。注目すべきは「競争上の優位」で、デジタル技術をフル活用し、新規参入者が一気にシェアを奪って逆転する、こうした現象が各業界で起こり始めています。他業界の事例では購買行動がECにシフトし、各企業がリアル拠点からECにシフトし、乗り遅れた企業は淘汰されています。
これからは、デジタル化による業務の一部改善だけでなく、DXによる「顧客接点の構築」と「継続的なつながり」を通じた顧客生涯価値の向上がより重要になります。これを踏まえ、当社グループのDX戦略として、お客様との接点の広がりと深掘りについて、「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」の考えを持ち、2022年度は、スギ薬局アプリのリニューアルに踏み出しました。病気の予防や健康維持に関する情報の配信やID統合によるお客様情報の一元管理、お客様の購買履歴にあわせたクーポンの配信を行い、お客様にとってストレスのないone to oneな関係を構築し、お買い上げ頻度やお買い上げ点数を高めていきます。

リアル店舗における接客においてもデジタルコミュニケーションを強化していきます。たとえば、化粧品部門でどのような要望をお聞きしたのか、どのようなサンプルを試したのかを記録する台帳をデジタル化し、スギ薬局アプリでの販促に活かします。また、管理栄養士が受けた相談内容も記録し、今後は、健康の一元管理ができる顧客とのデジタルコミュニケーション台帳をつくりたいと考えています。

「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」と「デジタルコミュニケーション」の実現によって、デジタルとリアルの顧客体験がシームレスでつながります。「デジタル」を介した顧客体験は、1,000万ダウンロードのスギ薬局アプリが大きな役割を担います。現在、スギ薬局アプリを見て、店舗に来店されるお客様は年間延べ数で約3億人。今後の課題は、デジタルで誘導した爆発的に生まれるニーズをリアル店舗でどう受け止めるか、ということにかかってきます。デジタルの推進により、一気に爆発的に増加する接客機会を丁寧に拾い上げ、今までの延長線上にある施策とは異なるアプローチで、リアル店舗のサービスを磨いていきます。この難題に対応できた企業こそ、今からを生き抜く会社であると考え、こうした課題に向き合える幸せを噛み締め、経営幹部一人ひとりが自分事として捉え、これに立ち向かっていく1年にしていきます。

調剤領域における変化対応について

電子処方せんでネット完結しやすく
対応の進捗状況
応答して説明する

2023年以降、調剤領域の制度改革の目玉の一つとして、電子処方せんの運用開始があります。4月には、オンライン資格確認が原則義務化となります。これらは、患者様、医療機関、薬局にとって、それぞれメリットがあるので、インフラや対応方法の整備など、当社グループも全面的に推進しており、足元では、オンライン資格確認システムの導入を完了し、全店で運用しています。

患者様のメリットとしては、正確かつリアルタイムな情報をもとに診察・処方・調剤が受けられるので、治療効果が高まり、薬の重複や問題のある併用によるトラブルも回避でき、不要な薬が減ります。医療機関や薬局としても、複数の医療機関をまたいで、直近のデータを含む過去数年分のデータが参照できるようになるので、安全かつ正確な対応ができ、入力業務や保管のためのファイリングなどの業務削減や保管スペースの確保も期待できます。

つまり、治療効果の向上、リスク管理の強化、生産性改善を通じて、医療全体のトータルコストを低減させることにつながります。患者様の安全性や利便性向上、より質の高い医療へのアクセスを可能にする「データヘルス改革」への対応は、計画的に進めています。こうした方針は、当社グループが掲げる「トータルヘルスケア戦略」と完全に方向性が一致しています。持続可能な社会を支えるための経営戦略や重要課題対応を掲げる当社グループにとって大きなビジネスチャンスと捉えています。日本の医療にとって、大きなメリットを生む制度改革ですので、当社グループが業界をけん引する気概を持って推進していきます。

当社グループの核となる調剤領域の制度改革について、2015年に示された「患者のための薬局ビジョン」に則り、国主導の変革が着実に進んでいます。特定の医療機関に依存せず、地域のお役に立つ薬局として面分業への対応は正しかったと改めて感じています。2022年4月に行われた薬価改定では、当社グループも調剤売上に対して、少なからず影響がありました。一方で、技術料の改定では、薬局業務を対物から対人へシフトさせ、薬剤師個々の関わり方において、今まで以上に地域の患者様へ寄り添うことを求めています。多職種連携での在宅医療も求められていますので、薬剤師一人ひとりの能力アップも含め教育の強化とDXの推進による業務の効率化も同時に進める必要があります。
当社グループで調剤をさせていただいている処方せん枚数は前年対比で増加を続けています。さらに多くの患者様に信頼される薬局にするために、待ち時間の短縮にも力を入れています。オペレーションの改善と機器の導入、発想の転換で、徹底的に効率化、スピード向上を図り、安全性との両立も実現しながら、患者様の待ち時間短縮に挑戦しています。実際に、大型の調剤薬局で対策を実行したところ、待ち時間が劇的に短縮し、その結果として、処方せん枚数の増加につながった事例もあり、それら取り組みを水平展開し、患者様に信頼される薬局づくりに注力していきます。

機器導入とオペレーション改善による効率化で待ち時間を短縮

業務効率化による待ち時間削減

新たな調剤薬局のイメージ

新たな調剤薬局のイメージ

中期経営計画について

2026年にスギ薬局は創業50周年を迎えます。そのとき、当社グループはどうあるべきか、バックキャスティングで考え、2022年度から始まった中期計画を、前半2年と後半3年に分けて考えています。

最初の2年は「飛躍に向けた土台づくり」、後半3年は「売上1兆円への飛躍」と位置づけ、2026年度の売上目標を1兆円を目指します。
中期計画は成長戦略と経営基盤強化の2つで構成されます。成長戦略として「ヘルスケア領域の深耕」「DX活用による顧客体験の変革」「協働・共創の拡大」の3つの項目を掲げ、それぞれの項目ごとに、今から築き上げていくべき方向性を定めています。
また、経営基盤強化も3つの項目からなり「データに基づく経営」「コスト構造の改革」「人財・組織の強化」を、それぞれの担当取締役の戦略に落とし込んでいます。「 飛躍に 向けた土台づくり」に残された期間はあと1年です。全組織が一丸となって「土台づくり」を完成できる1年にしていきます。

中期経営計画について

2026年度(2027年2月期)を最終年度とする中期経営計画

成長戦略

ヘルスケア領域の深耕
  • ヘルスケア基軸での出店(出店エリア/店舗タイプ/医療機関連携)
  • 物販×調剤の相乗効果を最大化
  • スギ薬局版地域包括ケアモデルの構築
DX活用による顧客体験の変革
  • デジタルによる顧客体験の進化
  • One-to-Oneマーケティングの展開
  • デジタル会員拡大と調剤利用率向上
協働・共創の拡大
  • 製配販の情報連携によるSCM※最適化/商品・カテゴリー開発
  • 国内外でのヘルスケアネットワーク構築
経営基盤強化
データに基づく経営
  • 生産性の高い組織/業務の実現
  • 投資効率の高い新規出店/既存店改装の実施
  • 次世代に向けた組織/人材の強化
コスト構造の改革
人財・組織の強化

※SCM:サプライチェーン・マネジメント

資本コスト・株価を意識した経営について

資本コストを的確に把握したうえで、経営理念および外部環境の変化を踏まえた経営戦略や経営計画を策定し、その概要を開示していきます。策定した経営戦略、経営計画については、毎年進捗状況等を確認・分析した上で、事業ポートフォリオの見直しや新たな事業投資、出店およびシステム投資、そして人財育成への投資など経営資源の配分計画を含む修正を行っていきます。
また、当社グループは、財務の健全性を担保したうえで、株主価値向上に資する「中長期的なROE向上」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資」を展開します。ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標とし、収益性の向上、総資産回転率等を常に改善し、中長期の継続的なROE向上を目指します。

2023年度の位置づけ

「飛躍に向けた土台づくり」完遂のために、今、必要とされている我々の行動の在り方・指針は何か、何に重きを置いた1年としていきたいかを考えました。

「一人ひとりに向き合う」。

当社グループの置かれている状況、今からの戦略を見据え、こんな1年にしていきたいという想いをシンプルで短い言葉に込め、2023年度の方針説明の場において、当社グループの社員にお願いをしました。お陰様で、多くのお客様・患者様から信頼をいただく中で、決して忘れてはいけないもの、大事にし続けていかなければならないものとして、第一に、“目の前のたった一人のお客様を大切にする”、という当社グループの理念を大切にしたいと考えました。企業規模が拡大し、事業が多角化し、DXが急速に進む今だからこそ、あらためて原点を見つめ、お客様・患者様「一人ひとりに向き合う」その重要性を強く認識しています。

代表取締役社長 杉浦 克典

「一人ひとりに向き合う」ことの大切さを認識する第二は、デジタル活用の視点です。2023年度は、リニューアルしたスギ薬局アプリで、年間延べ3億人を超えるお客様・患者様「一人ひとり」個別に対応できるようになります。たとえば、販促面において、チーム一丸でデータを分析し、お客様層を細分化するアプローチが進んでいます。対象となる集団をもっと小さくすると、行き着く先は「一人ひとり」のお客様・患者様になります。調剤の患者様も同様で、たとえば、風邪の解熱剤、糖尿病治療薬、抗がん剤、在宅患者様など、処方せんデータの分析によって個別の患者様が見えてきます。
データを徹底活用してお客様・患者様「一人ひとりに向き合う」ことで、その方にあわせた接客、サービスを提供することができます。

第三に、社員に向き合う。当社グループの強みは人による差別的優位性です。理念を実践し、お客様・患者様一人ひとりを大切にするすべての社員一人ひとりに向き合う、ということです。薬剤師が、医療事務が、登録販売者が、管理栄養士が、ビューティアドバイザーが、看護師が、それぞれ、異なるお客様・患者様に向き合い、スキルを身につけられるよう、社員一人ひとりの、スキル・能力・モチベーション・将来成長を見える化して、個別の教育プログラムを本格化させる1年にしていきます。サステナビリティ、DX、海外、弁護士、バイヤーなど、それぞれの専門家人財が、より高度で専門的な働き方ができるよう、人事制度を見直し、難易度の高い業務に取り組める環境を整え、社員に向き合う1 年にしていきます。