マネジメントメッセージ

スギ薬局グループは
皆様の健康で豊かな生活に貢献すべく
「地域のヘルスケアのインフラになる」ことを目指します。

代表取締役社長 杉浦 克典

スギホールディングス株式会社

代表取締役社長杉浦 克典

事業環境を取り巻く外部環境とスギ薬局グループの対応方針について

2023年度は、コロナに伴う対面や移動の制限がなくなり、ようやく日常が戻りました。これに伴い、経済・社会活動が戻り、景気は緩やかに回復するなど、前向きな変化も見られましたが、ウクライナや中東での軍事衝突の影響で資源高が継続し、円安も加わったことで物価は高止まりし、消費者の支出は冷え込みました。一方で、インバウンド需要は回復傾向で、2024年の訪日外国人はコロナ前の2019年を上回る人数まで伸びるという予測も出ています。2024年度の実質GDPはプラス成長が期待されていますが、2023年度と比べ鈍化の傾向であり、予断を許さない状況が続きます。

日常生活において、支出を控える行動が増加する一方で、価値を体感・体験できる商品やサービスには惜しむことなく投資するこだわり志向の「プレミアム消費」が増加しています。また、コロナ禍によって進歩した非接触・非対面の活動も新たなライフスタイルとして定着しており、シニア層のスマートフォンの普及拡大も顕著です。若い世代と同様にシニア世代もネットやアプリから情報を取得し、消費の入り口として急伸しており、ヘルスケア市場も変革を余儀なくされています。

ドラッグストア業界については、大手ドラッグストアのM&Aと競争激化により、企業数の淘汰が急速に進んでいき、日本全国で寡占化が進んでいくものと考えています。また、調剤薬局業界についても、同様年々厳しさを増す「調剤報酬改定」や電子処方せん、オンライン服薬指導など「薬局のDX※化」が進む中、国が掲げる「かかりつけ薬局」と「医療DX」の方針に基づく、対人業務、訪問調剤、DX対応に力を入れていかなければいけません。

その中でスギ薬局グループのビジネスは、少子高齢化が進む日本国内で数少ない成長産業だと認識しています。高齢化の進展とともに、自身の健康や美に関心が高い人が増えており、ヘルスケア産業はさらに広がっていくと考えています。トータルヘルスケア戦略に基づき、スギ薬局グループは、様々な可能性を視野に入れて志を同じくする方々と積極的に連携していきたいと考えています。

直近においても、スギ薬局グループには、漢方相談の薬日本堂、調剤薬局チェーンのひかりファーマなど、新たな会社が仲間に加わっており、I&H株式会社とも子会社化を前提とした連携に関するリリースを発信(2024年2月リリース)しております。
スギ薬局グループ内各企業の事業ノウハウやリソースを融合することで、事業成長を加速させ、グループ一体となって、「地域の皆様に信頼されるヘルスケアカンパニー」を創っていきます。

また、国内では少子高齢化や人口減少による消費の減退が進みます。スギ薬局グループでは、海外展開など新たな事業を担う会社も積極的に経営を続けており、これから勢いを増すアジア各国など、当社が培ってきたノウハウや商品・サービスを現地のパートナー企業に提供し、様々な連携・協働をしながら、日本のみならず海外各国で「地域のヘルスケアのインフラになる」ことを目指します。

関連会社およびパートナー海外事業展開を目指す企業

スギ薬局グループの特徴や強みを活かした価値創造について

スギ薬局グループには、薬剤師、管理栄養士、ビューティアドバイザー、看護師、登録販売者など、多様な専門家人財が揃っています。
中でも薬剤師は約4,000名が在籍しています。薬剤師不足が続き、薬剤師の確保が喫緊の課題である中、調剤薬局やドラッグストアのみならず、スーパー、コンビニ、EC事業者などの調剤事業参入も、薬剤師獲得を一層困難なものにしています。そのような中でも着実に薬剤師を採用できていることが、スギ薬局グループの大きな強みです。
ドラッグストア黎明期から一貫して調剤併設型ドラッグストアチェーンの展開に挑戦し、成長してきたスギ薬局グループだからこそという自負もあります。創業から変わらぬ処方せん調剤への取り組みは、地域に、そして患者様一人ひとりと向き合いたいと志す薬学生や現役薬剤師の具体的なビジョンとなり、共感となっていることが、採用を有利に展開できる根幹です。

ドミナント出店戦略で、関東・中部・関西の大都市圏の規模拡大に続き、2023年度は、訪日観光客のニーズにお応えする店舗も積極的に出店しました。2023年度は、前年度の107店舗を大幅に超える144店舗の新規出店を達成し、業界トップクラスの年間出店数を継続しており、スギ薬局グループ全体で2024年2月末現在の店舗数は1,718店に達しました。スギ薬局グループの強みである調剤併設率も大手ドラッグストアの中でトップクラスの81.8%まで拡大し、トータルヘルスケア戦略を実行する上で、価値創造の源泉となっています。生まれてからお亡くなりになるまでのすべての健康ステージで、信頼されるかかりつけ薬局として存在するべく、新規開局を進め、既存店の調剤室および調剤待合室の拡張にも積極果敢に取り組んでいます。薬剤師をはじめ店舗の専門家人財の活躍によって、医療機関を中心とした持続的な地域包括ケアの実現に貢献していきたいと考えています。

スギ薬局グループの特徴や強みを活かした価値創造について

デジタルへの取り組みも強化しています。お客様に、より快適で健康的な生活を送っていただくためのスギ薬局グループアプリによるサービスの提供が、お客様満足度を向上させ、店舗や各種サービスをご利用いただくという好循環につながっています。ダウンロード数1200万を超えるデジタル戦略をけん引する「スギ薬局アプリ」の機能改善は、お客様の声に向き合いながら継続的に行っています。細分化されたセグメントで個別の情報提供やクーポン配信など、顧客体験やお客様満足度を高め、商品やサービスの提案力を向上させ、一人ひとりの満足にお応えすることでお客様とのつながりを深めます。店内では、自分のスマホやお買物カートがレジ替わりになり、店外では店舗の品揃え・価格・在庫がわかり、ECサイトから注文が可能になるなど、お客様にとって「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」を感じていただける環境の実現を目指します。

「いつでもどこでも手のひらにスギ薬局」の実現

また、オンラインでのカウンセリングサービスはもとより、店舗でもビューティ領域や生活習慣改善の提案にデジタル端末を活用し、お客様満足度を高めています。
店舗従業員一人ひとりがいきいきと活躍できる環境が整備されることで、働き方が改善され、対人業務に注力でき、お客様満足につながります。お客様をはじめ、すべてのステークホルダーへの価値の創出にDXを積極的に推進していきます。これら価値創造の源泉であるスギ薬局グループの強みを一層磨き上げ、地域医療を支え、地域社会へ貢献すべく、スギ薬局グループが設定した5つのテーマと16の重要課題への対応を進め、サステナビリティ経営を推進し、持続可能な社会の実現に寄与してまいります。

スギ薬局グループのトータルヘルスケア戦略について

「トータルヘルスケア戦略」、それは、日本社会が抱える少子高齢化への対応、次々と創出され進化するデジタル技術を活用し、健康・医療というキーワードでお客様・患者様がどの健康状態であっても支援させていただく、スギ薬局グループの取り組みの全体像を表す、基幹となる戦略です。人は一生のうちに、病気やケガ、加齢による変化や、健康を維持するために様々な場面で幾度となく医療や薬に関与します。「トータルヘルスケア戦略」は、健康的な生活を継続できるよう予防や未病など「セルフケア」として関わる期間、病気を発症し、急性期や慢性期の治療に向き合う「医療・服薬」期間、そして「介護・生活支援」期間の3つのステージに分け、地域生活者の病気予防・健康管理に生涯に渡って関わり一貫したケアサイクルの中で健康増進の実現を目指すものです。スギ薬局グループの調剤併設型ドラッグストアを中心に、健診センターや介護施設、フィットネスジムなど、リアル店舗と、さらに行政機関とも連携し、DXを駆使したヘルスケアネットワークを構築できればと考えています。そうすることで地域密着でリアルとデジタルをシームレスに活用できるプラットフォームによってどのような健康状態のお客様とも接点を持ち、最適な商品・サービスを、一人ひとりの状態に合わせて提供することができます。

これまでのように、健康への不安や悩みが生じてから医療機関を受診するという対応だけでは、人生100年時代を迎えた超高齢社会を豊かに過ごすことはできません。それぞれのステージで自治体や健康保険組合、医療・介護従事者などの多職種連携によって地域の皆様の健康的な生活を支え続けていくことが必要です。医療を中心に多業種が連携し、地域、高齢者、その家族を支えていくネットワークの構築が急務です。すでに企業、行政からもご賛同いただき、地域でのヘルスケアネットワークが拡大しています。この戦略は海外でも評価され、アジア各国で現地企業と協業し取り組みが進んでいます。引き続き、様々な企業・団体・行政と共にこれまで以上に取り組みのスピードを速め、「トータルヘルスケア戦略」の実現に邁進していきます。

スギ薬局グループのトータルヘルスケア戦略について

スギ薬局グループのサステナビリティ経営について

22021年に、サステナビリティ経営を推進するための体制を整備すべく、サステナビリティ委員会、ESG推進室(現:コーポレートブランディング部サステナビリティ推進課)を組織として立ち上げ、5つのテーマと16の重要課題(マテリアリティ)を特定し、取り組みを活発化してきました。

SDGsへの意識の高まりは全世代に及んでいますが、特に、ミレニアル世代、Z世代と呼ばれる若い世代にその傾向が顕著です。環境・人権に配慮された商品を選択する「エシカル消費」行動もその一つでしょう。調達先の人権の問題、サプライチェーン全体で考えるべき課題への対応を社会は厳しい目で見ています。2022年度は、国際的な人権課題への意識の高まりと企業の社会的責任を踏まえ、スギ薬局グループ人権方針を、2023年度は「お取引先行動規範」を策定し、サプライチェーンにおいてスギ薬局グループが責任を果たしていく体制整備に着手しました。

地域社会への貢献

今後は、人権に配慮した上で調達されている原材料を使用いただくようにお取 引先様にお願いをしていかなければいけません。自社でデータベースを構築しつつ、特に自社開発商品に関しては、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを強化していきます。

資源循環にも力を入れていきます。『国内の資源は国内で回していく』という考え方のもとで、多くの商品を販売しているスギ薬局グループの責任として、少しでも貢献できるように多くの方々と連携していきます。2023年度は、ペットボトルをペットボトルに再生する『ボトルtoボトル水平リサイクル』の回収拠点店舗を数十店舗規模にまで展開を強化しました。まだまだテスト展開中ですが、回収拠点として展開を開始した店舗では、明らかな来店頻度の向上もあり、お客様にも好評でwin-winな結果も出ています。また、調剤事業を中心に大量に廃棄されるお薬PTPシートのリサイクルに対して、回収拠点としての役割を果たします。

フードドライブの実施 フードドライブの実施

その他、廃棄予定のユニフォームを回収し、店舗設備にアップサイクルする取り組みや、フードバンクと連携することで、食品ロスと貧困問題への対応を進めるなど、一歩一歩社会課題に対峙していきます。社会課題に立ち向かうことで、地域に貢献し、その延長線上に、地域の皆様に愛される企業としての地位を確立していきます。

脱炭素経営における考えや取り組みの進捗について

スギ薬局グループは、“脱炭素社会の実現”を重要課題に掲げ、取り組みを加速させてきました。初年度は、社有車のガソリン消費を中心に、温室効果ガスを直接排出するスコープ1、電気の使用に比例するスコープ2の見える化を行い、2030年のCO2排出削減目標を設定しました。2030年度の1店舗あたりCO2排出量を2014年度比で35%削減を目標としていましたが、早期に50%減へ上方修正を行いました。2021年12月には、TCFD提言への賛同表明を行った上で、TCFDが提言する開示要請項目に応じて、サステナビリティ委員会や取締役会の場で、リスクや機会の特定、CO2排出削減にむけたロードマップの検討など、適切に対応を進めています。直近では、具体的な削減策を実行すべく、店舗屋上にオンサイトPPAの運用で太陽光パネルを数十店舗レベルで設置しました。既存店、新店の対策を進める一方で、全店の屋根にパネルを設置しただけでは、CO2削減目標達成が難しいことも判明しています。スギ薬局グループは、安易にCO2フリーメニュー等に頼らず、“追加性”(新たな再エネ設備の投資につながる効果)のあるオフサイトPPA、自己託送型の再生可能エネルギー導入にも果敢に挑戦し、社会的な責任を果たしてまいります。既に2024年は、数十店舗単位でオフサイトPPAによる再生可能エネルギーの調達に関する契約も締結しており、脱炭素の取り組みを加速させていきます。

店舗の屋上に設置した太陽光パネル
店舗の屋上に設置した太陽光パネル

一方で、商品の調達から製造、販売、物流、廃棄に至るまで、サプライチェーンすべての活動で排出するCO2排出量であるスコープ3総計は、スコープ1、2の10倍以上となる約170万トンのCO2を排出しています。しかし、スギ薬局グループだけでスコープ3を削減することは困難です。企業間で連携し、ゼロベースでアイデアを出し合いながら、速やかに実証実験を行い、トライ&エラーを繰り返していく必要があります。過剰な包装を控えたり、植物油インキを使用したりと、CO2排出量の低い商品を付加価値として、お客様に訴求しながら販売する工夫や努力も必要です。販促物やPOPの無駄を省くことはもちろん、販売個数予測の精度を協力して向上し、不必要に仕入れすぎない、返品や廃棄を増やさない、製・配・販の連携も必要になります。また、ペットボトルを回収し、それをまたペットボトルの再生につなげるなど、廃棄を減らす資源循環の取り組みの加速も重要です。お取引先様との会議の場では、スコープ3の削減に向け、スギ薬局グループとの取り組みをお願いしています。中長期的な協業や、コンソーシアムなどの枠組みを設立しながらアイデア創出にご協力いただきたいと声をかけさせていただいております。

チャレンジ・カーボン・ニュートラルコンソーシアムの発表会フォトセッション チャレンジ・カーボン・ニュートラルコンソーシアムの発表会フォトセッション

2023年度は、チャレンジカーボンニュートラルコンソーシアムに加入させていただき、参加企業の環境配慮商品を陳列・訴求・販売する実証実験を行い、初めの一歩を踏み出しました。まだまだ、未来視点であるべき姿を描き、ゼロベースで検討しなければいけない事が多く、道筋が定まっていませんが、既存の枠を超えた連携で環境課題に対応すべく、様々な分野の方にご指導をいただきたいと考えております。

人財戦略について

急速なデジタル化、少子高齢化、人生100年時代、キャリア価値観の変化など、企業を取り巻く環境は大きく変わっています。スギ薬局グループにおいては、社員を資本として捉え、人は成長し価値創造の担い手になるとの信念を持ち、積極的に人財へ投資して企業価値を高めていきます。こうした考え方に基づき、「経営戦略と人財戦略」を連動させ、人事制度改革、適正配置、健康経営、社員エンゲージメントの向上を推進していきます。

人事データの可視化と並行して『人財ポートフォリオ』を作成します。各事業・部門にどんな能力を持った人が、どれくらい必要なのかを見える化し、理想と現実のギャップを明確にします。その上で、たとえば、新卒一括採用に限定しない採用方針や、既存社員の再配置、外部人財の獲得、アルムナイネットワークの構築、専門職・技術職の積極採用など、ギャップ解消に向けた施策を進めます。また、スギ薬局グループの最も大切な財産である社員が、笑顔でいつまでも健康的に働ける職場環境を追求し続けます。スギ薬局グループはこれまで6年連続で健康経営優良法人の認定を受けています。しかし、応募した多数の企業の中で、スギ薬局グループは健康経営をリードしている状況ではありません。現在の喫煙率11%台を10%未満にすべく、禁煙サポート施策を打ち出します。生活習慣病を減らすための特定保健指導の強化、メンタルヘルスを減らすための研修の実施や相談ダイヤルの対応スピードの強化、有給取得率の向上、育休取得促進や残業の削減など、ワークライフバランスの推進、あらゆる社員が活躍しやすい環境も整備し、社員のエンゲージメントを高めていきます。

また、人権対応の一環として、組織における心理的安全性の向上についての取り組みを強化します。社員の笑顔がお客様の笑顔につながる、“笑顔の連鎖”、それが当社の経営理念を実現するうえで重要な考え方です。つまり、店舗社員、パートナーの皆さんのやりがいが高まれば、お客様への貢献度や仕事の成果も向上する、生産性も向上することにつながります。

やりがいを考えるうえで、心理的安全性というものが重要になります。心理的安全を高めることで、自分らしく日々を過ごせることができ、言いたいことも言い合える、思い切った挑戦もでき、お客様にも親切丁寧な行動ができるようになる。当社には、職場の悩み・何でも相談ダイヤルというものがあり、通報件数は1400件を超え、日本企業の中でも、通報しやすい企業として、直近でもメディアに取り上げられております。

場の悩み。何でも談ダイヤル件数(年問)

また、通報された内容をすぐに調査し、対応できるようエリア人事部を設け、機動力を高めております。また、“一人一人に向き合う”をテーマに掲げ、上司への相談のしやすさを高めるよう促し、役員全員が店舗を訪店し、経営トップ自らが社員の声を聴きに行く取り組みに力を入れています。2024年度も引き続き、心理的安全性を高める取り組みを強化してまいります。

DX戦略について

スギ薬局グループのDX戦略の根幹は、生産性の向上と顧客生涯価値向上の実現を通じて、お客様と向き合う時間を豊かにすることです。そして、「お客様からのご相談への応対やカウンセリング」など、デジタル化できない、人と人との交わりこそがスギ薬局グループの最大の強みといえます。デジタル技術でいかに新しい価値を提供できるか、業務のデジタル化だけでなく、組織や業務プロセス、企業文化まで変革できるか、それによってスギ薬局グループの競争力を高め、優位性を確立することができるかに注力していきます。注目すべきは「競争上の優位」で、デジタル技術をフル活用し、新規参入者が一気にシェアを奪って逆転する、こうした現象が各業界で起こり始めています。他業界の事例では購買行動がECにシフトし、各企業がリアル拠点からECにシフトし、乗り遅れた企業は淘汰されています。これからは、デジタル化による業務の一部改善だけでなく、DXによる「顧客接点の構築」と「継続的なつながり」を通じた顧客生涯価値の向上がより重要になります。

これを踏まえ、スギ薬局グループのDX戦略として、お客様との接点の広がりと深掘りについて、「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」の考えを持ち、スギ薬局アプリの機能拡張・改修を定期的に行っています。病気の予防や健康維持に関する情報の配信やID統合によるお客様情報の一元管理、お客様の購買履歴にあわせたクーポンの配信を行い、お客様にとってストレスのないONE to ONEな関係を構築していきます。リアル店舗における接客においてもデジタルコミュニケーションを強化していきます。たとえば、化粧品部門でどのような要望をお聞きしたのか、どのようなサンプルを試したのかを記録する台帳をデジタル化し、スギ薬局アプリでの販促に活用します。また、管理栄養士が受けた相談内容も記録し、今後は、健康の一元管理ができる顧客とのデジタルコミュニケーション台帳をつくりたいと考えています。

お買物スマホアプリによる顧客体験の向上

「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」と「デジタルコミュニケーション」の実現によって、デジタルとリアルの顧客体験がシームレスでつながります。「デジタル」を介した顧客体験は、1,200万ダウンロードのスギ薬局アプリが大きな役割を担います。現在、スギ薬局アプリを見て、店舗に来店されるお客様は年間延べ数で約3.5億人。

今後の課題は、デジタルで誘導した爆発的に生まれるニーズをリアル店舗でどう受け止めるか、ということにかかってきます。デジタルの推進により、一気に爆発的に増加する接客機会を丁寧に拾い上げ、今までの延長線上にある施策とは異なるアプローチで、リアル店舗のサービスを磨いていきます。この難題に対応できた企業こそ、今からを生き抜く会社であると考え、こうした課題に向き合える幸福(しあわせ)を噛み締め、経営幹部一人ひとりが自分事として捉え、これに立ち向かっていく1年にしていきます。

デジタルコミュニテーション通信台帳の目指す姿

調剤領域における変化対応について

電子処方せんでネット完結しやすく
対応の進捗状況

電子処方せんの運用開始、オンライン資格確認が原則義務化など、患者様、医療機関、薬局にとって、それぞれメリットがある取り組みが進んでいます。インフラや対応方法の整備など、スギ薬局グループも全面的に推進しており、オンライン資格確認システムの導入を完了し、全店で運用しています。患者様のメリットとしては、正確かつリアルタイムな情報をもとに診察・処方・調剤が受けられるので、治療効果が高まり、薬の併用チェックを通じて、不要な薬が減ります。医療機関や薬局としても、複数の医療機関をまたいで、必要な情報の共有ができるようになるので、安全かつ正確な対応ができ、入力業務や保管のためのファイリングなどの業務削減や保管スペースの確保も期待できます。つまり、治療効果の向上、リスク管理の強化、生産性改善を通じて、医療全体のトータルコストを低減させることにつながります。患者様の安全性や利便性向上、より質の高い医療へのアクセスを可能にする「データヘルス改革」への対応は、計画的に進めています。こうした方針は、スギ薬局グループが掲げる「トータルヘルスケア戦略」と完全に方向性が一致しています。日本の医療にとって、大きなメリットを生む制度改革ですので、スギ薬局グループが業界をけん引する気概を持って推進していきます。スギ薬局グループの核となる調剤領域の制度改革について、2015年に示された「患者のための薬局ビジョン」に則り、国主導の変革が着実に進んでいます。特定の医療機関に依存せず、地域のお役に立つ薬局として面分業への対応は正しかったと改めて感じています。薬価改定では、スギ薬局グループも調剤売上に対して、少なからず影響がありました。一方で、技術料の改定では、薬局業務を対物から対人へシフトさせ、薬剤師個々の関わり方において、今まで以上に地域の患者様へ寄り添うことを求めています。多職種連携での在宅医療も求められていますので、薬剤師一人ひとりの能力アップも含め教育の強化とDXの推進による業務の効率化も同時に進める必要があります。スギ薬局グループで調剤をさせていただいている処方せん枚数は前年対比で増加を続けています。さらに多くの患者様に快適にご利用いただく薬局にするために、待ち時間の短縮にも力を入れています。オペレーションの改善と機器の導入、徹底的な効率化、スピード向上を図り、安全第一を大前提としたうえで、患者様の待ち時間短縮に挑戦しています。実際に、大型の調剤薬局で対策を実行したところ、待ち時間が劇的に短縮し、その結果として、処方せん枚数の増加につながった事例もあり、それら取り組みを水平展開し、患者様に信頼される薬局づくりに注力していきます。

中期経営計画について

2026年にスギ薬局は創業50周年を迎えます。そのとき、スギ薬局グループはどうあるべきか、未来視点であるべき姿を描き、2022年度から始まった中期経営計画を、前半2年と後半3年に分けて考えています。最初の2年は「飛躍に向けた土台づくり」、後半3年は「売上高1兆円への飛躍」と位置づけ、2026年度の売上目標は1兆円を目指します。中期計画は成長戦略と経営基盤強化の2つで構成されます。成長戦略として「ヘルスケア領域の深耕」「DX活用による顧客体験の変革」「協働・共創の拡大」の3つの項目を掲げ、それぞれの項目ごとに、今から築き上げていくべき方向性を定めています。また、経営基盤強化も3つの項目からなり「データに基づく経営」「コスト構造の改革」「人財・組織の強化」を、それぞれの担当取締役の戦略に落とし込んでいます。2023年度で最初の2年の「土台づくり」が終了しました。DXや商品開発、出店、海外、人材などの各種戦略を根本から見直し、様々な実験や取り組みが進み、その土台が固まったと確かな手ごたえを感じています。そして、2024年度から売上高1兆円に向けた飛躍の3年間がスタートします。この中期計画はあくまで当社の自力成長をベースにした定量目標です。一方で、ドラッグ・調剤業界の寡占化が加速度的に進み、数年で数千億円規模のM&Aが進むと想定し、売上高1兆円を最低限のハードルとして経営していきます。

中期経営計画について

2026年度(2027年2月期)を最終年度とする中期経営計画

成長戦略

ヘルスケア領域の深耕
  • ヘルスケア基軸での出店(出店エリア/店舗タイプ/医療機関連携)
  • 物販×調剤の相乗効果を最大化
  • スギ薬局版地域包括ケアモデルの構築
DX活用による顧客体験の変革
  • デジタルによる顧客体験の進化
  • ONE to ONEマーケティングの展開
  • デジタル会員拡大と調剤利用率向上
協働・共創の拡大
  • 製配販の情報連携によるSCM※最適化/商品・カテゴリー開発
  • 国内外でのヘルスケアネットワーク構築
経営基盤強化
データに基づく経営
  • 生産性の高い組織/業務の実現
  • 投資効率の高い新規出店/既存店改装の実施
  • 次世代に向けた組織/人材の強化
コスト構造の改革
人財・組織の強化

※SCM:サプライチェーン・マネジメント

スギホールディングスの機能強化について

当社の成長戦略は、新規出店に加え、デジタル、ヘルスケア、海外、M&Aに大きくシフトし始めています。グループ会社も増えています。そのため、2024年度はスギホールディングスの機能を強化し、スギ薬局グループ全体の成長をサポートする体制を整えます。

一例として、スギホールディングスにおける管理監督機能の強化と執行責任を明確にすべく「執行役員制度」を導入します。M&Aや出資等、スピード感を求めつつ、グループとしての経営企画・財務・M&A戦略を強化すべく「経営企画・財務担当」を設置します。また、当社グループ内の専門人財や経営スキルを持った人財など、人財マネジメントの重要性の高まりから「人事・管理・リスク担当」を設置し、さらに、グループ横断的に、調剤リスク対応や対外的な業務を担う「医療・調剤担当」、デジタル化やブランディングを推進する「DX・ブランディング担当」、今後大きな事業成長が見込まれる「海外担当」を設置します。

また、将来的には執行責任を子会社社長に委任する体制を構築していきます。

この様な中、スギホールディングスに求められるのは、スピード感のある事業運営の支援と、事業の見える化です。グループ各社の経営状況を俯瞰的に捉え、必要な経営資源を配分する司令塔として、その機能を強化し、徹底的に支援を行います。

資本コスト・株価を意識した経営について

2024年度から、経営企画・財務担当の執行役員を定めたうえで、資本コストや株価を意識した経営を強化していきます。

資本コストを的確に把握したうえで、外部環境の変化を踏まえた経営戦略や中期経営計画を策定し、その概要を開示しております。策定した経営戦略、中期経営計画については、毎年進捗状況等を確認・分析した上で、新たな事業投資、出店およびシステム投資、そして人財育成への投資など経営資源の配分計画に基づき対応していきます。新規の大型M&Aや事業投資を伴う資金調達については、株主価値向上を念頭においた財務方針に基づいて実施しています。また、当社グループは、株主価値向上に資する「中長期的なROE、ROIC向上」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資」を展開します。ROE、ROICを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標とし、収益性の向上、総資産回転率等を常に改善し、中長期の継続的なROE、ROIC向上を目指します。

財務
代表取締役社長 Katsunori Sugiura

今後は、資本コストを的確に把握し、事業ポートフォリオマネジメントや新規出店における投資効率の改善、新たな事業投資など、経営資源の配分を行うための一つの指標としてROIC指標を新たに導入していきます。ROICを導入するために、まずはROICを事業別に見える化するなど、体制整備を進めています。現場にはKPIへの紐づけも行うなど、試運転も開始しながら、ROIC指標を活用するための仕組みや社内浸透のための取り組みを加速していく予定です。

早速ですが、株式分割を行う事も決定しました。株式分割を行い、投資単位当たりの金額を引き下げることにより、より投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的としております。普通株式1株につき3株の割合での株式分割、当社の株主還元に関する基本方針、および財務状況等を総合的に勘案したうえで、配当予想を開示しております。2025年2月期の年間配当予想額35円を株式分割前の年間配当予想額に換算しますと105円であり、2024年2月期の年間配当予想額80円から実質25円の増配となります。今後も多くの株主様にも安心して、積極的に投資いただける経営を目指してまいります。